令和7年度 医療法人社団帰厚堂 事業運営方針

当法人では「愛と誠の精神」という基本理念のもと、良質かつ安全・安心な医療・介護を持続的に提供していくために、南昌病院、ケアセンター南昌を始め各施設が一体となって事業を推進してきた。

その一方で、我が国では高齢化の進展に伴い疾病構造が変化し、併せて必要な医療・介護ニーズが変化するなど取り巻く環境は大きく変化してきている。

今年は団塊世代が全て75歳以上となる2025年に当り、団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となる2040年に向けて生産年齢人口はさらに減少し続けていく。高齢単身世帯の増加とともに慢性疾患や複数の疾患を抱える患者、医療・介護の複合ニーズを有する患者・利用者、その上認知症も増加していくものと見られている。

このような背景の下、令和6年度には医療・介護・障害福祉報酬のトリプル改定が行われ、特に南昌病院においては令和4年度から入院患者数がコロナ禍の影響等で落ち込み、さらに物価上昇の追い討ちもあり、当法人はかつてない厳しい経営に直面している。

この経営危機を打開するには、病床の機能分化、在宅医療、医療・介護の連携を強化などあらゆる方策の検討を行い、より多くの患者・利用者を確保しなければならない。

しかしながら、医療・介護従事者の確保は年々厳しくなっており、働き方改革に基づいた勤務環境の改善、魅力ある職場作り、人材育成、医療・介護のDX化による効率的かつ質の高い提供体制の推進が喫緊の課題である。 以上を踏まえて、医療と介護の一体的な改革に全職員が一丸となって取り組み、地域から選ばれる病院・施設となって安定した経営基盤の確立を目指すものとする。

基本方針

Ⅰ.良質な医療・介護が提供できる環境の整備

ねらい

● 患者・利用者中心の安全・安心な医療・介護の提供

● 役割分担と連携の推進(取組みの視点:患者・利用者の視点、業務の質の視点)

主な指標

○ 医療安全対策・感染対策の推進

○ 新型コロナ感染予防対策

○ 防火・防災管理体制の推進

○ 患者(利用者)満足度の向上(対前年度比以上)

○ 入退院前後の医療・介護連携の体制強化

○ 超強化型老健基準の維持・強化

○ チーム医療・介護の充実

  1. 利用者の安全・安心な医療・介護の提供、医療安全対策、感染対策等の推進
    • リスクマネジメントラウンドの強化、インシデント事例の効果的活用等
    • 新型コロナウイルス感染症の感染拡大最小化
    • 感染対策、ICT活動・施設内ラウンドの継続
    • 医療安全管理体制を整備し、より安全対策を強化
    • 防災・感染対策の推進(火災・自然災害、院内感染を想定した訓練・研修の実施)
  2. 利用者へのサービス提供体制の充実
    • 患者・利用者の満足度の向上(満足度調査:南昌病院・ショートステイ)
    • 安定した人材の確保
    • 高度・専門機能評価(リハビリテーション(回復期))の更新認定(2回目:令和8年4月受審)
    • 盛岡南部地域リハビリ広域支援センターとしてリハビリの地域支援並びに岩手シルバーリハビリ体操指導者養成事業等へ協力
    • 看取り機能の充実
    • 訪問系サービスの充実
    • 介護予防と地域ケアパスによる認知症施策の推進
    • こずかた診療所の機能強化(MRIの導入、訪問診療の再開)
  3. 医療・介護の提供体制の強化・整備
    • 診療体制の強化・充実(医師確保:南昌病院、ケアセンター南昌)
    • 入退院前後における医療・介護連携の体制強化
    • 超強化型老健基準の維持・体制強化(敬愛荘、博愛荘)
    • 在宅復帰に向けたリハビリテーションの強化
    • 薬剤管理指導・病棟薬剤業務の強化
  4. 医療・介護提供基盤の充実整備
    • 医療DXの推進(電子カルテの導入検討、介護サービスのIT化)
    • 南昌病院の老朽化に伴う修繕等の対応

Ⅱ.効率的な医療・介護提供体制の構築

ねらい

● 運営体制の効率化と適正化(取組みの視点:業務効率の視点)

主な指標

○ 地域包括ケアシステムの推進

○ 法人施設間の連携体制の推進

  1. 関係機関と協同し地域包括ケアシステムの実行と推進 矢巾町、紫波町及び紫波郡医師会と連携し、地域包括ケアシステムの推進
    • 紫波郡医師会と協働して、地域の医療機関との病診連携を推進
    • 紫波郡内のリハビリ支援体制の強化
  2. 病院・施設間の連携体制の推進強化(病院・施設間の連携体制を推進するため、情報共有と定期的な協議の実施)
    • 多職種連携してネットワークづくり及びチームケア体制の強化
    • 地域医療・介護連携サービスの構築
    • 岩手医科大学附属病院との連携強化

Ⅲ.安定した経営基盤の確立

ねらい

● 固定費の削減と収益対変動費の意識醸成(取組みの視点:損益分岐点の視点)

主な指標

○ 各施設の患者・利用者の確保

○ 経営収支(黒字) 各施設(事業)の収支均衡

○ 地域で必要とされる施設機能の検討

  1. 経営基盤確立のため患者・利用者の継続的な確保、施設(事業)毎に目標値を定め、取組みする
    • 病院:病床利用率 95.0%(171人/日) 令和6年度 82.9%(149.2人/日)
    • 敬愛荘:利用率 95.0%(90人/日) 令和6年度 93.2%(87.8人/日)
    • 博愛荘:利用率 95.0%(88人/日) 令和6年度 84.4%(78.5人/日)
    • その他施設:対前年度以上
  2. 経営収支の改善
    • 診療報酬・介護報酬への対応(新基準・加算取得の取組)および職員勉強会の開催
    • 事業運営の見直しと効率化の検討、病棟再編の検討
    • 職員の人材確保と適正配置(施設基準を原則基本とする)
    • 職員のコスト意識の醸成
    • 経営基盤の確立を図るため、利用者状況(空き情報)の関係機関・地域へ定期的に情報発信等を行うなどの患者・利用者の確保

Ⅳ.職員の勤務環境の改善及び資質の向上等

ねらい

● 働き方改革関連法に基づいた勤務環境の改善・充実

● 人材育成と意識改革等(取組みの視点:職員の働きがい・学習と成長の視点)

主な指標

○ ハラスメント防止

○ 年次有給休暇の計画的な取得

○ 36協定の遵守

○ 人材育成の推進

○ 仕事と育児・介護の両立支援

  1. 職場環境の改善と法令遵守
    • 労働時間管理
      • 職員の出退勤時間の管理体制強化
      • 時間外勤務時間の管理と36協定の遵守・徹底(ノー残業デー(水曜日)の推進、時間外勤務者へ部署内での声掛け等)
    • 職員の負担軽減
      • 業務内容を見直し、省力化と効率化を各事業所で検証し対策
    • 職員の健康管理
      • 定期健康診断・ストレスチェックの結果に基づく健康管理強化(有所見者等の経過等管理、相談窓口)
    • 働きやすさ確保
      • ハラスメントの防止措置(パワーハラスメント・セクシャルハラスメント・妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント等その他あらゆるハラスメントの禁止)
      • 職員の勤務環境等を把握し、課題の抽出のうえ改善を検討、対策
      • 職員満足度の向上
      • 年次有給休暇の取得の推進(取得率目標75%以上(令和7年から5年計画)。誕生 月の年次取得等)
      • キャリアアップの支援、人事ローテーション、休業後のキャリア形成等支援
      • 「大企業」としての諸制度への取り組み
      • 育児・介護休暇制度の推進 男女とも仕事と育児・介護を両立できるような柔軟な働き方の拡充(男性取得率目標20%以上(令和7年から5年計画))
    • 服務規律等の遵守(利用者の人権尊重、規則遵守の徹底)
  2. 職員研修の充実と重点的実施
    • 職員研修、外部研修及び個別研修をとおした医療、介護の質向上・充実
      • 専門的知識や技術取得のための各職域の学会や研修会への積極的支援
      • 職員の啓発意欲に応えるための自己研修の機会の提供、所要経費の助成支援
      • 全職員研修の計画的実施(医療安全と感染対策等、義務付けられた研修の出席率向上)
    • 感染状況に応じ、オンライン研修の積極的活用
  3. 職場の実態と能力に応じた人材育成
    • 介護職員の処遇改善とキャリアデザインに応じた、計画的な人材育成
    • 専門資格を有する職員の計画的な人材育成
      • 認定看護師(脳卒中、褥瘡、感染等)、特定看護師及びリハビリ職員の認定療法士資格取得等の取組みを推進
  4. 地球環境に配慮した働き方と業務運用
    • ペーパーレス化の推進(会議資料等)